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主催事業情報 2024/1/5 【特別インタビュー】オルガン・プロムナード・コンサートvol.403 出演:塩澤 真輝
1/26(金) オルガン・プロムナード・コンサートvol.403
塩澤 真輝 特別インタビュー
1月のプロムナードコンサートは、オーディションで選出された塩澤真輝さんが出演します。演奏会に向けて、ご本人へインタビュー!
ー 県民ホールのプロムナード・コンサートは今年度から年齢制限をなくし、オルガニストを目指している方なら誰でも受ける事ができるようになりました。塩澤さんが今回オーディションを受けようと思われたきっかけは何でしょうか。
塩澤 ー このオーディションが毎年行われているのは、大学に入る前から知っていました。大学に入ってからは大学院の先輩にアシスタントとしてオーディションに連れて行っていただき、2年前はオーディションにより選出された栗田麻子さんのコンサートでアシスタントをさせていただく機会に恵まれ、先輩方が県民ホールで演奏されている姿を目の当たりにして、自分も大学を卒業したらオーディションに挑戦したいと思っていました。
そう思っていた矢先に今年度から年齢制限が撤廃されると聞き、迷いなしにオーディション受験を決めました。最初は、録音審査を通過してオーディションに出場することで県民ホールのオルガンが弾けたら嬉しいくらいに考えていたので、まさかコンサートで演奏させていただけることになるとは思っていませんでした。オーディションに引き続きコンサートで県民ホールのオルガンに再会できるのが楽しみです。
ー 何歳ころからオルガンを始められましたか。「オルガンとの出会い」を教えてください。
塩澤 ー 私がオルガンを始めたのは9歳のときでした。幼少から通っていた教会には、電子オルガンがありました。電子なので本物のオルガンではないし、パイプはついていないものの、2段の鍵盤・ピアノとは色が逆の白鍵と黒鍵・鍵盤の横に林立する謎のノブ・楽器の横幅いっぱいに並ぶ足鍵盤、とにかくそのビジュアルに惹かれました。そこで教会の人に弾かせてくださいとお願いすると、礼拝でオルガンを弾く人でなければ弾いてはいけないと言われてしまいました。しかし、駄目と言われたことをやりたくなるのが人間の性。礼拝で弾くためにオルガンを教えてくださいとお願いしたのが、私の「オルガンとの出会い」かもしれません。
それ以来オルガンを弾き続けてきて、今やオルガンを弾くことは私にとって当たり前ですが、たまにオルガンが「禁断の木の実」だったときのことを思い出して初心を忘れないようにしています。
ー プログラムを組む時に考えられたこと、聞きどころなど教えてください。
塩澤 ー 45分間のコンサートをさせていただけるということで、真っ先にバッハの《前奏曲とフーガ ホ短調》を演奏しようと決めました。この作品は1度取り組んだことがあり大好きなのですが、演奏に15分近く要する長大な作品であるためにこれまでのコンサートではあまり弾く機会がありませんでした。県民ホールのオルガンはバッハをはじめとしたバロック期の音楽がよく合うので絶好のチャンスだと思って選曲しました。
また、今年度のプロムナード・コンサートのテーマが「オルガンでつなぐ『輪』」とお聞きしたので、バッハを通して17世紀から現代までの音楽家たちをつなぐプログラムにしました。
コンサートは、若いバッハが400kmを歩いて演奏を聴きに行ったブクステフーデの《前奏曲 ハ長調》に始まり、バッハが出版譜の誤りを訂正しながら写譜したグリニーの《オルガン曲集》より〈フーガ〉と、叙情的なテノール声部が印象的な〈ティエルス・アン・タイユ(3度管をテノールで)〉に続きます。
プログラムの中心に配置したのは現代の作品です。バッハのコラール前奏曲集《オルガン小曲集》にはタイトルのみが書かれて作品が書かれていないコラールが118曲もあります。イギリスのオルガニスト、ウィリアム・ワイトヘッドが始動した「オルゲルビュヒライン・プロジェクト」はその118のコラールを、21世紀の書法でコラール前奏曲に仕立て上げるものです。今回はその中からシモン・ジョンソンの〈幸いなことよ、神を恐れる人は〉を演奏します。そして、その次に演奏するのはフォーレの《レクイエム》です。バッハはグリニーらのフランス古典の音楽に影響を受けた一方で、フランス・ロマン派の器楽作品はバッハをはじめとするドイツ音楽に影響を受けて発展していきました。数々の傑作を残すフォーレはオルガニストとして知られていますが、実はオルガンの作品は残していません。今回は拙編で〈ああイエスよ〉と、テノールソロが美しい〈神の子羊〉を抜粋して演奏します。最後に、「前奏曲」と「フーガ」で始まったコンサートはバッハの《前奏曲とフーガ ホ短調》で幕を閉じます。
ー 神奈川県民ホールのオルガンにどのようなイメージを持っていますか。また、神奈川県民ホールのオルガンとの思い出などがあれば教えてください。
塩澤 ー 県民ホールのオルガンとはたくさんの思い出があります。初めてオルガンのコンサートに出かけたのは、11歳のとき県民ホールで行われた2013年3月29日のプロムナード・コンサート vol. 323でした。
私自身神奈川県民ですので、県民ホールのコンサートにはそれ以後も何回かお伺いしました。数ある思い出の中でも一番印象に残っているのは、現在オルガン・アドバイザーを務められている中田恵子さんの就任記念リサイタルでアシスタントをさせていただいたことです。特に現代曲でのアシスタントには苦戦しましたが、演奏者の真横でリサイタルに携わったことで、オルガニストとして県民ホールの舞台に立つことへの憧れを持つようになりました。
県民ホールのオルガンはドイツ製の楽器ですが、中田さんのリサイタルではフランス音楽が中心でしたし、2023年9月に来日したトマ・オスピタルさんの素晴らしい演奏も記憶に新しく、さまざまな表情を見せるポテンシャルを持っていることは言うまでもありませんが、何よりお客さんとの距離が近いオルガンだと思っています。小ホールという空間ならではの温かみや、迫力を感じることができるのではないでしょうか。
ー 今後の目標や取り組んでみたい事はありますか。また、どのような音楽家を目指されていますか。
塩澤 ーこれからはオルガンの新しい可能性をもっと探っていきたいと思っています。日本人というアイデンティティを生かした音楽や、他楽器とのアンサンブル、即興演奏などさまざまなことに興味があるので、オルガン音楽の伝統を学びつつ、自分にしかできない新しい音楽を発信していきたいです。
私が目指す音楽家像は、畏れ多いですが、敬愛するバッハとメシアンです。演奏も作曲もするマルチな音楽家で、独自の音楽語法を用い、時代の先駆者であった彼らの音楽の中心には常に神の愛を表す信仰があります。私も彼らのように、また彼らが築き上げてきたオルガン音楽の伝統の後継として、21世紀の日本のオルガン音楽を創り出していきたいです。
《チケット発売中》
C×Organ オルガン・コンサート・シリーズ
『オルガン・プロムナード・コンサートvol.403』
【日時】2024/1/26(金) 12:10 開演(11:40 開場)
【会場】神奈川県民ホール 小ホール
【料金】全席指定 500円
《公演時間:45分》
《チケット好評発売中!》
公演詳細はこちら
塩澤 真輝 (オルガン) SHIOZAWA Masaki, Organ
2002年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。幼少から通う教会の電子オルガンに魅了され、9歳からオルガンを始める。平和学園オルガン講座を経て、オルガンを今井奈緒子、廣江理枝、チェンバロを廣澤麻美、ピアノを八十島成子、山中歩夢、即興演奏を近藤岳、平野公崇、和声・エクリチュールを松下倫士、榎政則の各氏に師事。県立神奈川総合高校普通科個性化コース卒業。同校在学時は吹奏楽部で打楽器・ハープを担当し、校内公演『華一匁』『打樂』では作曲を手がけるなどオルガンに限らず様々なジャンルの音楽から影響を受ける。また卒業制作課題を機に日本音楽に興味を持ち、現在も篳篥を特訓中。
現在東京藝術大学音楽学部器楽科オルガン専攻4年次在学中。2022年度青山音楽財団奨学生。武蔵野市民文化会館第1回アフタヌーン U25オルガンコンサート出演者に選出。同学より海外派遣奨学金を受け、ASAP(アーツスタディ・アブロードプログラム)事業「即興 東京藝 術大学 VS.パリ国立高等音楽院」に参加。宮田亮平奨学金受賞。茅ヶ崎聖契キリスト教会、筑波学園教会オルガニスト。日本オルガニスト協会学生会員。