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主催事業情報 2021/11/3 【メッセージ特別公開】一柳慧(芸術総監督)&沼野雄司(芸術参与) ―「C×C(シー・バイ・シー) 山本裕之×武満徹」
11月6日に開催が迫る「C×C (シー・バイ・シー) 作曲家が作曲家を訪ねる旅 山本裕之×武満徹」。このたび、公演プログラム掲載の一柳慧(神奈川芸術文化財団 芸術総監督)と沼野雄司(県民ホール・音楽堂 芸術参与)によるメッセージを特別公開いたします。
一柳慧 (神奈川芸術文化財団 芸術総監督)
いよいよ県民ホール小ホールを舞台として新しい室内楽シリーズが始まります。音楽の過去、現在、未来を一つにつなぎ、作曲家が作曲家を旅する試みです。
コロナ禍によって私たちを取り巻く環境が変化したと感じています。さまざまな場面での人々の振る舞い方も、空間のしつらえ方も、芸術文化への接し方も。
これから音楽の聴き方も変わって行くのかもしれません。そのことと、音楽のあり方そのものとがどう結びついていくか…。そうした変化の時代だからこそ、ふと立ち止まり、今私たちの前で鳴り響く音楽が、その深部に過去の歴史と伝統を伴っていることを見直すことは、大変重要なことだと思います。それはきっと、現在の音楽を支え、未来へと導く新たな刺激となるであろうと、私は信じております。
今回、没後25年の武満徹と没後100年のサン=サーンスという音楽史に名を刻む作曲家と向き合うのは、山本裕之と川上統。いずれも現在充実した仕事ぶりを見せるだけでなく、それが知性あふれる挑戦である点で注目されます。彼らは過去から何を見出し、自らの創作にどう結びつけていくでしょうか。
新たな時代を拓くであろう彼らとともに、音楽と改めて出会う旅をお楽しみいただければ幸いです。
沼野雄司 (県民ホール・音楽堂 芸術参与)
「C×C(シー・バイ・シー)」は、その年に記念年を迎える過去の作曲家と、現在を生きる作曲家が出会う場として誕生しました。
「個展」や「グループ展」ならばさして珍しくないと思いますが、この新企画の肝は、二人の作曲家を対等に扱い、相互の対話をはかる点にあります。過去と現在が交錯し、衝突しながら、何らかのケミストリーが生じること、それこそが私たちの狙いです。
実は、過去の作曲家とのペアリングは企画側で決定したものであり、山本裕之さんや川上統さん自身が選んだものではありません。彼らにとってみれば、まさに寝耳に水のように突然、「武満徹とペアで」「サン=サーンスとペアで」という提案がもたらされたわけなのです。しかし、お二人はこの暴力的ともいえるアイディアに快く応じて、むしろ積極的にプログラムを組みあげ、そしてペアの相手に合わせた新曲を作ってくださいました。
40代の川上さん、50代の山本さんは、いずれも「若手」と「ベテラン」の狭間にあって、真に充実した活動を続けてきた作曲家ですが、何より特徴的なのはその作品が常に、知的なたくらみに満ちている点にあります。私たち企画側は、きっと彼らならばこの「無茶ぶり」にこたえて、刺激に満ちた演奏会をプロデュースしてくれるはずだと考え、シリーズ最初の大役をお願いしました。結果として、その期待は早くも予想以上の形で満たされようとしています。
現代音楽が真に刺激的な存在であるためには、過去との対話を欠かすことはできないでしょう。このシリーズでは、「記念年を迎える作曲家」をひとつの鏡にしながら、現代の作曲家に新しいチャレンジを促すとともに、次代を担う鋭敏fな感性を持った演奏家を次々に起用してゆくつもりです。
今後もあたたかく、そして厳しくシリーズを見守っていただけたら幸いです。
●公演概要
C×C (シー・バイ・シー) 作曲家が作曲家を訪ねる旅 山本裕之×武満徹
2021年11月6日(土)15:00開演 小ホール
プログラム
山本裕之:紐育舞曲 ヴァイオリン、ピッコロ、バス・クラリネット、フリューゲルホルンとピアノ**のための
武満徹:雨の呪文 フルート、クラリネット、ハープ、ピアノ**とヴィブラフォンのための
山本裕之:輪郭主義II 事前録音されたヴィブラフォンとピアノ*のための 加藤訓子(ヴィブラフォン)
武満徹:スタンザII ハープとテープのための
武満徹:サクリファイス アルト・フルート、リュートとヴィブラフォンのための
山本裕之:輪郭主義IV フルート、ヴァイオリンとピアノ**のための
武満徹:カトレーンII クラリネット、ヴァイオリン、チェロとピアノ*のための
山本裕之:横浜舞曲(神奈川県民ホール委嘱作品・初演) クラリネット、ハープ、ヴィブラフォン、ギターとチェロのための
出演
石上 真由子(ヴァイオリン)
山澤 慧(チェロ)
丁 仁愛(フルート)
岩瀬 龍太(クラリネット)
佐藤 秀徳(フリューゲルホルン)
高野 麗音(ハープ)
大場 章裕(打楽器)
土橋 庸人(リュート&ギター)
中村 和枝(ピアノ)*
大瀧 拓哉(ピアノ)**
有馬 純寿(エレクトロニクス)
チケット料金
全席指定 一般¥4,000 学生(24歳以下・枚数限定)¥2,000
セット券(本公演&1/8「川上統×サン=サーンス」)¥7,000
●関連公演
C×C (シー・バイ・シー) 作曲家が作曲家を訪ねる旅 川上統×サン=サーンス
2022年1月8日(土)15:00開演 小ホール