聴覚の障害は、見た目では分かりません。
施設に来館されていても、私たちは気がつきません。
でもお迎えする準備は常にしておきたいものです。
そこで先ず思い浮かぶ準備は筆談です。
しかし経験者なら知っていますが、簡単なようでいて意外と難しいのが筆談です。
簡潔に書いたつもりでも、思いのほか文章の意味が伝わらないことがあります。
相手にストレスを感じさせないために、この感覚のズレを解消する必要があります。
そう考えて、スマートな筆談のコツを学ぶ講座を企画しました。
と、今考えれば少しの勘違いのもと企画した講座でしたが、結果は素晴らしいものでした。
講師は、横浜ラポールの聴覚障害者情報提供施設で、
聴覚障害支援を行っている金子真美さんと市野川直子さん、
横浜市聴覚障害者協会の、島野紫都さんの三名です。
金子さんと島野さんはろう(聾)者、市野川さんは手話通訳者です。
準備段階から感じていましたが、講座が始まってすぐに、
筆談に対する勘違いがあることが分かりました、
先ず、手話が出来ないから筆談という発想です。
筆談以前に、口をゆっくり大きく動かしたり、ジェスチャーも交えて伝えるやり方があります。
これで結構伝わります。それでうまくいかなければ、筆談を加えればいいのです。
最初から筆談ありきではありません。
*様々な理由で読話を嫌う人もいます。相手の様子を見て臨機応変な対応が求められます。
日本人だから、同じように日本語が分かるだろうという思い込みも間違いです。
同じ日本人でも、ろう者が普段の生活で使う第一言語は手話です。
手話は日本語の延長ではなく、語彙も文法も異なる別の言語です。
そのため、ろう者には日本語が苦手な人がいます…ここまでは知ってました。
しかし、どこかピンと来ない話であり、
日本語の苦手なろう者は英語の苦手な日本人と同じ、という理解まで至ってませんでした。
このことについて講師の市野川さんは、
「ろう者は外国の人だと思ってください」と一言で明快に説明してくれました。
今回の講座は、前半で聴覚障害の基礎知識を学び、
後半で筆談の話とロールプレイでの実践という流れで進みました。
前半の基礎知識コーナーでは、生まれたときから聴こえない先天のろう、
幼少期失聴、青年期以降の失聴、加齢による難聴など、障害の多様さと個々の特性を学んだのですが、
講師の説明が実に分かりやすく、面白く、聴覚障害への理解を深めるには十分なものでした。
後半のロールプレイも、前半で得た知識を応用すれば困難なものではありませんでした。
スマートな筆談に必要なのはコツやテクニックではなく、相手への理解。
あたりまえのことだけど、忘れがちなことを再認識して、講座は終了しました。
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劇場運営マネージメント講座
シリーズ「これからのインクルーシブ社会と公立文化施設の取り組み」
第9回 Let's 筆談 !!
- 2018年7月25日 実施
- 障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール ラポールボックス